落語ワークショップ(2/6回)落語の世界と小説の世界~無駄を省く~

落語をビジネスに活かそうと思って、いろいろと検討。


ちょうど良いタイミングで、落語のワークショップがあることを発見&申し込み!

(↑クリックすると、ワークショップの詳細が分かります)



さて、全6回の講座の第2回目は、


落語の世界と小説の世界~無駄を省く~


っていうテーマでした。


そして、今回の講座から、いよいよ金原亭馬生師匠が登場!です。




小説の例としては、


モーパッサンの短編小説」


を取り上げて講義が進みます。


この小説・・・内容にオチがあるので、落語になるケースが多いということです。


ちなみに、「首飾り」という短編小説は、落語と同じで話の最後が会話で終わって(話を落として)います。


ノブレス・オブリージュ(noblessse/貴族の oblige/そうさせる)に関しては、詳しい話を荻野先生がされていました。


この短編小説「首飾り」 の背景が分かります。

(貴族で生まれた娘は持参金を持たせて嫁にやるケースがあり、嫁にいけないと修道院に行くといった解説がありました)


また、小説「親殺し」に出てくるジョージ(Georges)は円朝さんの落語で「名人長二」としてとりあげているとのこと。




その後、金原亭馬生師匠の落語の授業がスタート。


明治15年に速記術が誕生
それまでは文章では残っていないので、耳で聞き覚える。
→必然的に無駄をどんどんなくさないと覚えられない
→落語は「教えてくれ」と言われるとタダで教える慣習(談志さんはもらったようだが)

明治17年に速記本の第1弾が発売
おなじく講談本も出る。講談社はこれでもうける。しかし、もうけているんだからもっと金をよこせと講談本の著者がいいはじめる。それを断ったから、新しい形式で小説が誕生した




・無駄を如何に省くか
例えば次の小咄


「隣の空き地に囲いが出来たったね」「へい」

→この場合「隣の」というのがいらない。限定してしまうことで、聞く側の想像の妨げになる。
→落語は百人聞けば百人違う想像をするのが良い
→聞く側との距離感を遠ざけてしまってはダメ




・講談と落語と小説の違い

講談:落語とは違うジャンル。ストーリーを一人が説明しながら展開していく

落語:説明を解釈した上で会話のみで展開していく。会話はつぎの3通り(地で、登場人物の会話で、登場人物が話す描写(独り言))で、これは日本だけの話術→重要なことは「誰が誰に話しているか?」。わかりやすく簡単な言葉で話す(でもそれあ難しい)。熟語(四字(しじ)熟語)は落語では決して使われない。っというのは言葉では相手に伝わらないので。


小説:描写が大事





・落語の道具

扇子と手ぬぐいを使う際には、本物を想像して不自然に使い方はダメ。




・話芸では、次の3つが揃うと客がドッと入る
・一声:声がいいこと
・二節:節回し(調子や抑揚の変化)がいいこと
・三男前:見た目がいいこと





・日本の芸は「見立て」の芸で、見る方にも聞く方にも責任がある




・文字の文化より、言葉の文化が圧倒的に古い



・日本語の特徴は2つ
①少ない言葉で多くの物を表し、相手に伝えるのが得意(感情を入れたりして使い分けした)
発音が同じ物は同じ語源だったが、漢字の登場で、別物となってしまった
②慮る(おもんばかる)が得意




・何かが発達すると、衰退する物が必ずある




・日本の会話力
昔:会話が得意だった(得意というよりも会話を楽しんでいた)
今:世界で最も下手。おしゃべり下手。
→たくみな会話:①訓練と②ポイントをつかむ必要がある
→しゃべり上手は聞き上手でもある



・今の落語の落ちのほとんどは「醒睡笑」という安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)作の作品から



・落語のプロは200年ぐらい前から
落語のセミプロは雑俳(回文、折句、地口、前句付)
前句付:五七五七七のうしろの「七七」をお題にする





・あいさつ:自分の健康管理にもなる(相手が自分の感覚を同じかどうかを確かめることができる)
→「おはようございます、こんにちは、こんばんは」のあとに続くのが本当のあいさつ。このあと省略されているというつもりでいうことが大切
→いまふうの言葉「お疲れ様です」は英訳できない[荻野さん談]
→あいさつを義務でも続けていると気持ちが必ず乗ってくる
→習い事も同じで、まず①「型を教えて」、それから②「心を教える」。正しい型は正しい心がついてくるし、正しい心は正しい型を求める。
→正しい型だけでは商売にならない




・・・といったマジメな講義を中心に、時にはおもしろネタも

・実力の古今亭、人気の柳家、どうしようもない林屋





そして、いよいよ落語の実践が始まります!



・今日の落語のレッスン:
声を大きく、はっきりと。うまい下手は二の次



■レッスンポイント1■
・気を送る
:相手の体に発して、自分に戻す「気のキャッチボール」。気は意識の問題。発する先は目ではなく、相手の眉間(金原亭馬生流)。大人数の場合は、一番後ろの人に送る。高座から客席奥の左右の端っこを見る。


・上下と左右について
グローバルでは右手に客人を置くが、落語では当時の中国に習って、左が偉い人。落語も偉い人は左にいるイメージで話していく。
左大臣は右大臣より偉い。風神(兄)と雷神(弟)も一緒。ただ、今の結婚式場は違ってグローバル方式。
高座(踊るわけじゃないので、舞台とは言わない)を北に見立てて、下手(右)から出て上手(左)に入る



■レッスンポイント2■
・落ちが大切で、その為に(落ちが効果的になる為に)考えて話を展開させる
→ビジネスでは落ち=テーマ
→落ちは触れない・言わない・想像させないようにする
→登場人物の言葉で落とす。地に戻ってはダメ、説明してもダメ。「金原亭流」
→山にゆっくり登って、頂上で一気に下降するイメージ




■実践で気を付けるポイント
・扇子を筆に見立てる場合は、竹の方をお客に見せる
・落ちは相手役のまま言う
・落語をするときは顔をお客に見せる(おでこを見せる)。下を向かないようにする
・道具はもったままではなく、下に置いて役を切替える



■実践小咄1)字が書けない噺
「おい、たけちゃん、今なにやってんだい?」
「あにきに手紙を書いてんだよ」
「おい、よせよ、たけちゃん、おまえさん、字が書けないだろ」
「えへへ、いいんだよ、兄貴は字が読めないんだもの」


■実践小咄2)雨のほうきの噺

ごくそそっかしい人が夕立にあったってぇ噺がありまして・・・
「お、降ってきたねえ。降るなんて思ってなかったから持ってこなかったなぁ。あ、あそこの人、やけにあたしのこと見て笑ってるよ。ねえ、そこのひと、あたしのこと、知ってますかねえ?」
「ええ、知ってますとも。あなたはあたしのきょうだいですから。傘ですね、ええ、土間にありますよ」
「いやぁ、ありがたい」
「あ、あんたはそそっかしいから、返しに来なくていいからね。なくしちゃいますから。私が取りに行きます
 から・・・。あっ、傘はそっち!あぁ、それは、ほうき!あー、ほうきもってっちゃったよ」
「いやぁ、きょうだいってのは有り難いねぇ。持つべきものはきょうだいだねぇ。あれ、これはひどい、よこなぐりの雨っていうやつかい。あぁ、しかも、えもりがするよ。ん、ひどい雨で、傘がほうきみたいになっちゃった。」




落語を教わるときは、口伝という説明通り、師匠から、口伝による落語を教わったのですが、それにしても、難しかったです。

37歳にして、教わることの難しさを痛感しました。


初心と謙虚さの大切さをこの講座で改めて学んだとても勉強になった1日でした。